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のど・頚部の病気にも様々なものがありますが、代表的なものについてまとめてみました。
咽頭炎
のどは上咽頭、中咽頭、下咽頭に分けられます。口を開けて、目で見える部分が中咽頭。それより上が上咽頭、それより下が下咽頭です。下咽頭の前方(のどぼとけの部分)に喉頭があります。
ここでは、上咽頭炎を除く咽頭炎について記載します。
急性咽頭炎は、この部位にウイルスや細菌が感染することにより起こります。
急性咽頭炎が治りきらなかった場合や、咽頭粘膜への持続的な刺激(喫煙、後鼻漏などによる)がある場合に、慢性咽頭炎となります。
急性咽頭炎では、のどの痛み、発熱、頭痛、倦怠感、頚部リンパ節の腫れが起こります。慢性咽頭炎では、咽頭違和感や咳症状が起こることがあります。
治療は、薬物療法(消炎鎮痛剤、抗生物質など)、咽頭へのルゴール塗布、ネブライザー(吸入)治療、含嗽薬(イソジン、ハチアズレなど)によるうがいを行います。
イソジンを用いてのうがいは、回数が多すぎると咽頭の常在菌(害の無い菌)も殺菌され、逆効果になってしまいます。イソジンでのうがいは、1日2〜3回程度が適切です。
喉頭炎
喉頭炎は、この部位にウイルスや細菌が感染することにより起こります。 急性喉頭炎が治りきらなかった場合や、喉頭粘膜への持続的な刺激(喫煙、後鼻漏などによる)、声の酷使がある場合に、慢性喉頭炎となります。
急性喉頭炎では、声がれ、咳、のどの痛み、違和感、発熱が起こります。慢性喉頭炎では、声がれ、咳、のどの違和感が慢性的になることがあります。
治療は、薬物療法(消炎鎮痛剤、咳止め、抗生物質など)、ネブライザー(吸入)治療を行います。沈黙療法(声を出さないこと)も有効です。
喉頭炎の中でも、喉頭蓋(こうとうがい)に炎症が起こるもの(急性喉頭蓋炎)では、嚥下時の激しい痛み、高熱、喘鳴(ゼーゼーという音)を伴う呼吸困難、声のこもりが急速に起こります。このような症状が起こった場合は、夜間でも早めに救急病院に受診してください(喉頭蓋は食物が気管に入らないように、蓋をする部分です)。
上咽頭炎
鼻とのどの間(鼻の奥の突き当たり)のことを上咽頭といいます。この部位にウイルスや細菌が感染すると、上咽頭炎が起こります。
また鼻炎や副鼻腔炎による鼻漏が上咽頭に流れることによっても、上咽頭炎が起こります。上咽頭炎では、鼻とのどの間の痛み・違和感・乾いた感じ、後鼻漏(鼻の奥からのどに鼻水が流れる)、頭痛、倦怠感といった症状が起こります。急性期には発熱症状がみられることもあります。
上咽頭炎は、耳の病気(急性中耳炎、滲出性中耳炎、耳管狭窄症)の原因となることもあります。
上咽頭は口を開けても見えない部分にあるため、上咽頭炎は耳鼻咽喉科で内視鏡などの検査を行わない限り診断ができません。上咽頭炎は慢性化することも多いため、上記の症状が長引く場合は、一度耳鼻咽喉科を受診してください。
当院では、上咽頭炎の発見と治療に特に力を入れています。というのは、私(院長)自身が、体調を崩すとよく上咽頭炎を起こしていたからです。上咽頭炎になると、頭重感や、後鼻漏による不快感に悩まされます。しかし、上咽頭炎を繰り返しているうちに、この病気の予防法や効果的な治療法が徐々に分かってきました。
上咽頭炎の予防は、体の冷え、のどの粘膜の乾きを防ぐことが重要です。これは、上咽頭炎だけでなく、咽頭炎、喉頭炎、扁桃炎の予防にもつながります。
体の冷えや、のどの粘膜の乾きは、鼻やのどの粘膜に存在する線毛の動きを弱らせます。線毛は本来、ウイルスや細菌などの異物を体外に排除する働きがありますが、線毛の動きが弱ると、ウイルスや細菌が体内に侵入しやすくなります。
のどの粘膜の乾きを防ぐためには、こまめな水分補給が有効です。この場合の水分は、お茶でもよいですが、お茶ではかえって口の乾き感が増すことがあるので、水が最もよいでしょう。
当院では、上咽頭炎の治療として、一般的な薬物療法(消炎剤、粘液調整剤、抗生物質など)、ネブライザー(吸入)治療のほかに、鼻洗浄、Bスポット療法を行っています。
鼻洗浄は、水分補給やうがいでは届かない上咽頭粘膜の乾きを防ぐために有効です。家庭で行える鼻洗浄器が市販されていますので、これを利用されるのもよいでしょう。
家庭での鼻洗浄の注意点
・0.9〜2%の食塩水を用いること
・水温は25〜30度程度
・1日に2〜3回程度までにする
・洗浄中や洗浄後に鼻をすすらない
・洗浄後は、片方ずつ鼻をかむ
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水道水で鼻洗浄は行わないでください。水道水には塩素が含まれており、塩素は鼻やのどの粘膜の線毛運動を弱める働きがあるため、鼻洗浄が逆効果になります。
水道水を用いる場合は、浄水器を使うか、5分以上沸騰させて塩素を除去した後に、食塩を加えて鼻洗浄を行うようにしましょう。
Bスポット療法について
Bスポット療法は、上咽頭に塩化亜鉛などの消炎剤を直接塗布する治療法です。
東京医科歯科大学元教授の堀口先生によって考案された方法で、上咽頭炎の消炎に効果的です。また、風邪は上咽頭の炎症から始まることも多いため、風邪の初期の消炎にも有効です。
塩化亜鉛は、口の中、または鼻の中から上咽頭に塗布します。上咽頭炎の強い方では、治療後に強い痛みが生じたり、一時的に頭痛が強くなることがあります。しかし、治療後数時間は痛いものの、その後で症状(上咽頭の痛み、後鼻漏、頭痛など)が改善するケースが多くみられます。私(院長)も体調が悪い時に自分自身でBスポット療法を行いますが、上咽頭がヒリヒリした後に、症状が楽になってきます。
Bスポット療法の副作用はほとんどありませんが、塩化亜鉛を飲み込むと胸焼けが起こる可能性があるため、飲み込まないように気をつける必要があります。
一度の治療だけで症状が軽快する場合もあります。慢性的な上咽頭炎に対しては、週に1〜2回のペースで10回程度を目安に治療を行っています。
上咽頭は内視鏡を使わないとよく見えない部分だけに、上咽頭炎が発見されずに、慢性的な症状に悩まされる方が多く存在します。上咽頭炎の症状に当てはまる方は、ぜひ一度受診してみてください。
扁桃炎、扁桃肥大
よく「扁桃腺」と呼ばれている部分は、医学的には口蓋扁桃といいます。口蓋扁桃は、咽頭の奥の両側に1つずつ存在するリンパ組織です。
出生時には小さく、徐々に大きくなり5〜7歳で最も発育し、12歳以降になると次第に縮小します。咽頭の感染を繰り返すと、口蓋扁桃肥大が高度になることがあります。
口蓋扁桃が肥大していても、特に症状がなければ治療の必要はありません。
急性扁桃炎は、溶連菌などの細菌が原因となることが多く、のどの痛み、発熱、頭痛、倦怠感、頚部リンパ節の腫れが起こります。また、口蓋扁桃に黄白色の点(膿栓)がみられることもあります。
治療は、薬物療法(抗生物質、消炎鎮痛剤など)、ネブライザー(吸入)治療、含嗽薬によるうがいを行います。食事が困難な場合は、点滴治療が必要です。
扁桃炎を繰り返す場合は、扁桃摘出手術を考える必要があります。扁桃摘出切除を行うには、7泊8日程度の入院が必要となります。
扁桃摘出手術を考えるべきケース
・1年に3回以上、扁桃炎と発熱(38度以上)を繰り返す
・睡眠時無呼吸があり、扁桃肥大が原因と考えられる場合
・病巣感染症と考えられ、薬物療法によっても改善しない場合
病巣感染症について
口蓋扁桃の炎症が原因となり、腎炎(尿潜血、タンパク尿)、掌蹠膿疱症(手のひらの皮膚症状)、リウマチ熱など他臓器の症状が起こるものを病巣感染症といいます。
病巣感染症の原因となるのは溶連菌と考えられています。扁桃炎の治療が不十分で、溶連菌が口蓋扁桃に住み着いた状態になることにより、上記の症状が起こる可能性が出てきます。
扁桃炎を繰り返す時は、尿検査で尿潜血・タンパク尿の有無を調べたほうがよいでしょう。当院では、扁桃炎で受診される方には、尿検査のほかに、溶連菌の検出検査(15分程度で結果が判明します)を行っています。
溶連菌による扁桃炎と考えられる場合は、溶連菌に効果のある抗生物質を10日間〜14日間程度内服します。通常よりも長期間の抗生物質内服を行うことで、しっかりと除菌を行い、病巣感染症の予防をはかります。
アデノイド肥大
アデノイドは、鼻の奥の上咽頭という部分にあり、口蓋扁桃と同じくリンパ組織です。
出生時には小さく、徐々に大きくなり3〜7歳で最も発育し、12歳以降になると次第に縮小します。鼻から上咽頭にかけての感染を繰り返している小児では、アデノイド肥大が高度になっていることがあります。
アデノイド肥大による症状としては、鼻閉、口呼吸、いびきがよくみられます。また、アデノイド肥大は、滲出性中耳炎、副鼻腔炎の原因となります。この場合の鼻閉には、鼻炎の薬が無効なことがあります。小児で鼻炎の薬を使っても鼻閉が改善されない場合は、アデノイド高度肥大の可能性がありますので、耳鼻咽喉科の診察を受けてください。
アデノイド肥大の診断は、レントゲンまたは内視鏡で行います。アデノイドが高度に肥大しており、症状も強い場合は、切除手術が必要なことがあります。アデノイド切除を行うには、3泊4日程度の入院が必要となります。
橈骨遠位端骨折の関節炎
口内炎
口内炎は日常よくみられる症状です。口腔粘膜、歯肉、舌、口唇など様々な場所に起こります。
口内炎の原因としては、ヘルペスウイルス感染、ビタミン不足などが考えられますが、原因不明で口内炎を繰り返す場合もあります。抗生物質の使用時や、免疫力の低下時には、口内に白いカビが増殖することもあり、強い痛みが起こります。
治療法は原因によって異なりますが、一般的には塗り薬(消炎剤、抗ウイルス剤など)、ビタミン剤を使用します。口内にカビが増殖した場合は、抗カビ剤のうがい薬が有効です。
声帯ポリープ
喉頭には声帯という器官があり、声を出す働きがあります。声帯の一部が腫れてくるものを声帯ポリープといいます。
声帯ポリープは、大きな声を出し過ぎた場合や、のどの調子が悪い時に無理をして声を出した場合などに、炎症が強くなり発生します。声帯ポリープが発生すると、声が出にくい、かすれるといった症状が起こります。
声帯ポリープの有無は、内視鏡で容易に分かります。
初期の声帯ポリープは、沈黙療法(声を出さないこと)、薬物療法(消炎剤など)、ネブライザー(吸入)治療で改善されます。ポリープがある程度大きくなると、切除手術が必要となることもあります。手術は通常全身麻酔で行われ、3日以上の入院が必要です。
声が出にくい症状が続く時は、稀ながら喉頭がんの可能性もありますので、一度耳鼻咽喉科に受診してください。
逆流性食道炎
逆流性食道炎は、胃酸が食道に逆流することで、胸焼けなどの症状を起こす病気です。食道下部の筋肉が緩むことや、ストレスなどによる胃酸過多によって起こります。
胃酸がのどまで逆流してくると、のどの違和感、声が出にくい、咳といった症状が起こる場合があります。
内視鏡で観察すると、逆流性食道炎の方では、喉頭粘膜の腫れを認めることがあります。
逆流性食道炎と考えられる場合、胃薬の中でも特に胃酸逆流を抑える効果の強いもの(プロトンポンプ阻害薬)の処方を行います。油ものの摂取を控えることや、食後2時間は横にならないといった注意も必要になります。
胸焼けが長期間続き、食事時にのどの奥にしみる感じ、つかえる感じ、体重減少などの症状がある場合は、稀ながら食道がんの可能性があるため、食道・胃カメラの可能な施設に紹介状を作成します。
咳喘息
咳喘息は、咳が慢性的に続く病気です。風邪などで気道粘膜が炎症を起こしたことがきっかけとなり、わずかな刺激で敏感に咳が出る状態が続くことが特徴です。風邪をひいた後に咳だけが残るという場合は、この病気の可能性があります。
一般的な喘息でみられるようなヒューヒューという呼吸困難は咳喘息では起こりません。のどにイガイガ感を伴うことがありますが、発熱はほとんどありません。のどの内視鏡検査や、胸部レントゲンでは特に異常を認めないことが多いのが特徴です。
寒暖の差、喫煙、会話、運動などが咳発作のきっかけになると考えられています。また、飲酒、ストレスも咳喘息によくないと考えられています。
咳喘息では、痰の検査で好酸球という細胞が多くみられるため、当院では痰の検査を行っています。
咳喘息には、一般的な風邪薬、咳止め、抗生物質はほとんど無効で、気管支拡張剤や、吸入ステロイド薬が有効です。
咳喘息の約30%は本格的な喘息に移行することが知られているため、正しい治療を行うことが重要です。症状がよくなっても、すぐに治療をやめると再発することがあり、注意が必要です。
吸入ステロイド薬は副作用がほとんどないため、長期間の使用にも適しています。
アトピー咳嗽(がいそう)
咳喘息とよく似た症状(長引く咳)がみられる病気です。咳喘息と同様に、寒暖の差、喫煙、会話、運動などが咳発作のきっかけになると考えられています。のどの内視鏡検査や、胸部レントゲンでは、多くの場合特に異常を認めません。
咳喘息との違いは、アトピー咳嗽には気管支拡張薬は無効であることです。アトピー咳嗽には、抗ヒスタミン薬と吸入ステロイド薬が有効です。咳喘息とは異なり、アトピー咳嗽が本格的な喘息に移行することはほとんどないと考えられています。
耳下腺の病気
耳下腺は、耳の前下部に左右1つずつあり、唾液を作る働きがあります。耳下腺で作られた唾液は、耳下腺管という管を通って、口腔内の頬粘膜に流れていきます。
耳下腺に起こる病気で最も有名なのは、流行性耳下腺炎(おたふく風邪)でしょう。その他に、耳下腺腫瘍が発生することがあります。
処方減量、FDA
耳下腺炎
耳下腺炎には、ムンプスウイルスによって起こるもの(流行性耳下腺炎)と、その他のウイルス・細菌によって起こるもの(急性または慢性耳下腺炎)があります。
流行性耳下腺炎は、小児に発生することが大部分です。咳やくしゃみによる飛沫感染が多く、2〜3週間の潜伏期の後、耳下腺の腫れと痛み、発熱が起こります。耳下腺の腫れは両側のことも、片側だけのこともあります。
症状と病歴から診断可能なことが多いですが、確定診断のためには血液検査(発症初期と回復後の2回血液検査を行い、ムンプスウイルスの抗体価を比較)を行います。安静と対症療法(消炎剤など)により、腫れは1週間以内に軽快します。腫れが引くまでは、学校への登校は出来ません。
耳下腺腫瘍
耳下腺部にできる腫瘍の多くは良性腫瘍です。しかし、腫瘍が大きくなると、顔面神経を圧迫することにより顔面神経麻痺の症状が起こることがあるので、増大する耳下腺腫瘍では切除手術が必要となります。
耳下腺腫瘍の診断は、頚部エコー、またはCT、MRIで行います。
顎下腺の病気
顎下腺は、顎の下に左右1つずつあり、唾液を作る働きがあります。顎下腺で作られた唾液は、顎下腺管という管を通って、舌の裏側に流れていきます。
顎下腺周辺に起こる病気で時々みられるのは、唾石症、顎下部リンパ節炎です。
顎下腺に腫瘍が発生することは稀ですが、顎の下の腫れが長く続く場合は、頚部エコー検査を行ったほうがよいでしょう。
唾石症
顎下腺や、顎下腺管に結石(唾石)ができる病気です。食事時に顎の下の腫れが起こるのが特徴です。
小さい唾石であれば、薬物療法(消炎剤、抗生物質など)が有効なことがあります。唾石が大きくなっており症状を繰り返す場合は、口の中、もしくは頚部皮膚を切開して唾石を摘出する必要があります。
顎下部リンパ節炎
のど、歯肉などの炎症に伴って、顎下腺周囲のリンパ節が腫れることがあります。
頚部エコー検査を行い、顎下腺腫瘍との鑑別を行います。
歯科的治療を行うことで軽快することがありますが、うがいで口腔内の清潔を保つことも必要となります。
粉瘤
粉瘤は、皮下に袋ができ、その中に皮膚の垢(角質)や皮脂がたまる良性の病気です。耳鼻咽喉科の範囲では耳たぶの近くによく発生し、少し硬いしこりとして触れます。
頭部や頚部にしこりを触れる場合は、エコー検査を行い、リンパ節炎や、脂肪腫などの病気との鑑別を行います。薬物療法(消炎剤、抗生物質など)で軽快することもありますが、ある程度大きくなると切除を考慮する必要があります。
頚部リンパ節炎
頚部には約200個のリンパ節があり、体内にウイルスや細菌が侵入することを防ぐ働きをしています。通常は、頚部リンパ節は数ミリ程度の大きさです。
咽頭炎や扁桃炎の際に、頚部リンパ節も腫れることはよくあります。また、虫歯や歯肉炎の際に、頚部リンパ節が腫れることもあります。この場合は、咽頭炎や扁桃炎の治療、歯科的治療により、頚部リンパ節の腫れも軽快します。
少し特殊な頚部リンパ節炎として、亜急性壊死性リンパ節炎、伝染性単核球症があります。
亜急性壊死性リンパ節炎
頚部のリンパ節の腫れと痛み、発熱を起こす病気です。頚部の腫れは1〜3ヶ月程度続くことがあり、発熱は無治療では1ヶ月程度続くことがあります。10〜30代の女性に多く、ウイルスが原因かと考えられています。
通常の消炎治療を行っても頚部の腫れが続く場合は、血液検査を行います。亜急性壊死性リンパ節炎では、白血球が減少していることがよくあります。
亜急性壊死性リンパ節炎の治療は、基本的には対症療法(消炎鎮痛剤など)となります。
伝染性単核球症
頚部のリンパ節の腫れ、発熱、のどの痛みを起こす病気です。10代後半から20歳代の若年者に多く、EBウイルスが原因です。
口蓋扁桃が腫れていることが多く、肝機能低下を伴うこともよくあります。
伝染性単核球症が疑われる場合は、まず安静が必要です。治療は薬物療法(消炎鎮痛剤、抗生物質など)を行います。
通常は2〜3週間以内に後遺症を残さずに軽快しますが、肝機能低下が続く場合は経過観察が必要となります。
のどに発生するがん
のどに発生するがんは、胃がん、肺がんにくらべると、発生数はかなり少ないものです。しかし、のどのがんは、食事摂取が困難になるなど日常生活に大きな支障が生じることがあるため、早期発見が重要です。
のどは上咽頭、中咽頭、下咽頭に分けられます。口を開けて、目で見える部分が中咽頭。それより上が上咽頭、それより下が下咽頭です。下咽頭の前方(のどぼとけの部分)に喉頭があります。
上咽頭がんは、日本では稀な病気ですが、鼻出血、頚部リンパ節の腫れ、鼻閉、耳のつまった感じが起こる場合は注意が必要です。
中咽頭がんでは、食事時に違和感、しみる感じが起こります。
下咽頭がんでは、嚥下時の違和感、声の出にくさ、嚥下時の耳の痛みが起こります。
喉頭がんでは、がんの発生部位により症状が異なりますが、声の出にくさ、嚥下時の違和感が起こります。
舌がんでは、舌の痛み、腫れ、または潰瘍(舌のへこみ)が起こります。
上記の症状は、いずれも炎症性の病気でも起こることのある症状です。そのため、これらの症状があるだけで、がんがあるとは断定できません。早めに耳鼻咽喉科を受診したほうがよいと考えられるのは、以下のような場合です。
耳鼻咽喉科に受診したほうがよいケース
・上記の症状が、2週間以上にわたって改善しない
・痰や鼻水に血が混じる
・特にダイエットをしていないのに、体重減少がみられる
中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がん、舌がんは、喫煙や飲酒と関係することが知られていますので、喫煙歴や長年の飲酒歴のある方では、注意を要します。
視診や、内視鏡による検査で、ほとんどの場合はがんの有無の診断が可能です。当院では、がんの早期発見のために、NBI内視鏡を導入しています。
前文で「ほとんどの場合は…」と書きましたが、視診や内視鏡でも発見しにくいがんも存在します。下咽頭がんの一部(食道との境界に発生するもの)や、喉頭がんの一部(声帯よりも下方に発生するもの)、初期の舌がんがそれにあたります。これらの可能性が考えられる場合は、他院と連携をとって、食道内視鏡、CT、MRIを行います。
視診や内視鏡などの検査でがんと考えられる場合は、早期の治療開始が重要なため、速やかに近隣の総合病院に紹介状を作成します。
NBI内視鏡について
NBI内視鏡は、がん(上咽頭がん、中咽頭がん、下咽頭がん、喉頭がん、舌がん)の早期発見に効果的な検査機器です。
多くのがんでは、その早期から粘膜表面の微小な血管が増殖します。NBI内視鏡は、従来の内視鏡では判りにくかった微小な血管の増殖を観察することが可能です。
県内の耳鼻咽喉科でまだ数台しか導入されていない新しい機器ですが、がんの早期発見をはかるために導入しています。
内視鏡(ファイバーカメラ)は比較的細いので、検査に伴う苦痛も少なくて済みます。
内視鏡の所見をテレビモニターで患者さんに直接見ていただきながら、説明を行っています。
悪性リンパ腫
悪性リンパ腫は、リンパ組織から発生する悪性腫瘍です。頚部、わきの下、鼠径部(大腿部のつけ根)のリンパ節の腫れや、扁桃肥大、倦怠感、発熱、寝汗、体重減少が起こることがあります。頚部のリンパ節は、腫れていても痛みを伴わないことがあります。
頚部に複数の腫れ(しこり)があり、これが約1センチ以上の大きさで、2週間以上持続する場合は、念のため耳鼻咽喉科を受診されたほうがよいでしょう。
当院では、頚部エコー検査、のどの診察を行い、悪性リンパ腫が疑われる場合は血液検査も行います。
診断を確定するためには、リンパ節の組織検査が必要となります。エコー検査・血液検査で悪性リンパ腫が疑われる場合は、近隣の総合病院へ紹介状を作成いたします。
頚部エコー検査について
当院では、最新のカラードップラーエコー装置を導入しています。
エコー検査の利点は、痛みが無いことと、CTやMRIでも分からない初期の病変も分かりやすい点です。
がんの頚部転移によるリンパ節の腫れでは、リンパ節に向かうリンパ流の増大が観察されることがあります。カラードップラーエコー装置は、従来の白黒エコー装置にくらべて頚部の血流やリンパ流の状態が分かりやすいのが特徴です。
頚部エコーの対象疾患
・耳の周りの腫れもの(耳下腺炎、耳下腺腫瘍、粉瘤、リンパ節炎など)
・顎の下の腫れもの(顎下腺炎、唾石症、顎下腺腫瘍、顎下部リンパ節炎など)
・頚部の腫れもの(頚部リンパ節炎、のどに発生するがんのリンパ節転移、悪性リンパ腫、甲状腺疾患など)
このような場合は一度頚部エコー検査を
・腫れものの大きさが1センチ以上
・腫れものが複数ある
・2週間以上続いており、小さくなってこない
検査は、部分的な腫れものについては診察時にすぐ行います。腫れの範囲が広い時や、がんが疑われる場合は、予約検査として昼休みの時間内にゆっくり時間をかけて行います。
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